第8話

間違いでなかった美容の選択

美容学校を出て、その後も東京に残って、先生のお手伝いをし、技術を磨きました。
講師みたいなこともさせられました。
そんなときに川越で美容院を開業された方がお見えになって、
「美顔器を備えつけたけれども、誰も操作できる人がいないので、どなたか来て教えてほしい」
結局、わたしが行くことになりました。

当時の川越は田舎です。若いきれいなお嬢さんを助手に二人連れていきましたら、珍しがって新聞記者が毎日遊びにくるのです。
お目当てはどこにあったか知らないけれど、毎日やって来ては、お茶を飲み、「新しい美容」「新しい美顔の機械」だとか、「美人の美容師」だとか、新聞に書いてくれるのです。

そうしたら川越の在の方から、お太鼓締めて、自転車に乗って、朝から晩まで、お客さんが来るわ、来るわ、もうびっくりしてしまいました。そんなふうで、ものすごく繁盛したわけです。

いま思いますと、わたしの選択、「美容」という仕事は、決して間違いではなかったと思っています。いや、これに勝る選択はなかったと思います。
美容という職業を通して自立し、新しさ、美しさの欲求や、あふれんばかりの好奇心に十分に応えてくれ、わたしの心に眠る、無限の可能性を引き出してくれているからです。

 

前のページへ

目次ページへ戻る

次のページへ