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わたしが秋田に美容院を開業して間もなく、秋田の御大家の花嫁の「お支度」を承ったことがございます。
わたしの生まれ古里は秋田ですけれど、小学校低学年で東京へ行きましたので、秋田に伝わる「しきたり」のようなものには、疎かったのでございます。
こんなことがございました。
秋田の風習が分からなかったので、花嫁さんのお支度に、東京と同じように、無地の正装(きもの)で行ったのです。
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そうしましたら
「先生、イショッコ、脱いで、着替えてください。よごれますからー」
と言われ、大変驚いてしまいました。
当時の「髪結さん」たちは、モンペをはいて、台所から入って、家事の手伝いをしていたのです。
出入りの「床屋さん」のオドたちも、同じで、台所でいろいろお手伝いをしているのです。
わたしは車で、内玄関から入って行ったものですから、向こうも随分驚いたのでしょうね。
「ここは東京と違う」
と言われたときはショックでした。
「髪」は髪結いさん。
「化粧」や「着付け」は美容師さんの時代の忘れられない「しきたり」の違いでございました。
家のご主人が
「さぁさ、どうぞ、こちらへ、どうぞ」
と案内してくださったので事なきを得たのですが、こうした「しきたり」に合わせるのも随分エネルギーを使うものだと、つくづく思ったものでございます。
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