第2話

わたしの一人芝居


わたしの祖父母は、大変芝居が好きだったようです。父もまた芸事が好きで、謡曲や小唄、義太夫も、師匠をよんで習っていました。ですから耳学問というのでしょうか、子供のときからそういうことが耳になじんでいたように思います。

わたしのお寺は、釈迦堂光明寺でございます。お寺の前に「秋田座」という芝居小屋がありまして、お寺の帰りには、祖父母によく連れられて行ったものです。わたしは何回か芝居をみているうちに、いつのまにか、ごく自然に「子役の台詞」と身振りを覚えたのです。

それが中々面白いというので、お客さんが来るたびごとに、やらされたことを覚えています。わたしの得意は「阿波の鳴門」でした。

「・・・国は阿波の徳島の・・・わたしはババさんにあづけられ、トトさん、カカさんに会いたくて、一人旅、どこの家でも泊めてはくれず、野に寝、山に寝、軒下に・・・どこにどうしていやしゃんすか・・・」

なかなか上手に、手振り身振りでやったらしく、今でも覚えていますから、不思議なものです。

皆さんはお笑いになるでしょうが、鳴門大橋ができたとき、その人形芝居「阿波の鳴門」を観に、淡路島へ行ってきました。100年近い郷愁に心を燃やすなんて「物好きバアサン」と思われるでしょうが、とても充実の旅でございました。

  
  

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